高田 徹
株式会社設計室ソイル
土の透水性は、重要な性質の一つで、河川・海岸堤防、フィルダムや基礎地盤からの漏水、井戸からの揚水、地下水位以下の掘削に伴う排水、斜面の安定に影響する浸透流など、地盤工学の多くの問題に関わってくる。
一方、戸建住宅の建設では、経済的理由があるせいか、土の透水試験を実施することはほとんどない。しかし住宅地盤でも、土の透水性や水に起因して検討すべきケースはあり、十分な検討を行わなかったせいで結果的に損することもあったりする。
例えば、過去に宅地内の一部で水はけが悪いといった相談を受けたことがある。この要因は、これまで使用していた比較的大型な貯留槽を撤去する際に固化材等を用いて埋め戻したため、その部分の透水性が周囲と異なって低くなったからだと後の調査で分かったが、これも水の透水性に起因した問題の一つである。また、地下室付きの住宅建設で、適切な止水対策を行わずに地下水位以下の掘削を行ったせいで基礎底版部を緩ませたり、仮設土留めの隙間から地下水が逸出して隣地の宅地を沈下させるといった事故もある。事前に土の透水性を見極め、適切な対策(例えば、仮設的な止水注入)を行えば未然に事故を防ぐこともできたりする。さらには、近年問題視されている宅地の陥没事故は、土の透水性に起因して土の細粒分が洗掘されることで陥没に至ったりする。
土の透水性は、住宅地盤であまり馴染まないと思うかも知れないが、広義には圧密現象も土の透水性と深い関連がある。また土の透水係数は、土質とも関連性がある。「土の透水試験」は、土の透水性、すなわち土中における自由水の移動のしやすさを測定するための試験である。本稿では、当試験の最低限知っておいて欲しい内容や留意点についてまとめた。
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土の透水試験[1.9 MB]