●地形
静岡県は、本州太平洋沿岸部のほぼ中央に位置し、伊豆半島より駿河湾を囲み、浜名湖に至る比較的長い海岸線を有する。東西155km、南北118kmの範囲を内包し、地質構造や地形的特徴から大井川と富士川を境に、西部、中部、東部の3つに区分される。全体として、北方より展開する山地やその山麓部を形成する丘陵が海岸近くにまで近接し、低平地(扇状地性低地・氾濫平野など)の形成は主要河川の下流および河口付近に限られる。
大井川以西にあたる西部は、北方より赤石山脈が3,000m級を含む山々を展開し、その延長である山麓丘陵が沿岸部にも近接する。また、赤石山脈を水源に南流する天竜川は、下流域より周辺地形を開析し、広大な扇状地を形成する。御前崎のすぐ内陸側には砂礫台地や丘陵地が分布している。
中部は大井川と富士川に挟まれた駿河湾の西岸地域を言い、西部同様、北部域には赤石山脈が展開するとともに、これと並走する身延山地とその山麓丘陵が海岸付近にまで及んでいる。また、同じく北方山系を水源とする大井川や阿部川が南流し、河口付近で扇状地を形成する。
東部は富士川以東の地域で、糸魚川―静岡構造線という大断層を西縁とするフォッサマグナ地帯*1の南端にあたり、100万年程前までは海が入り込んでいたと考えられている。日本最高峰の富士山(標高3,776m)より、愛鷹山(あしたかやま)、箱根火山の山麓部を経て、伊豆半島北部へと及び、火山地帯を形成する。また、富士川河口から沼津に至る駿河湾沿いには細く砂嘴(さし*2)が発達する。
伊豆半島では、沼津付近で駿河湾に注ぐ狩野川を除くと、地形を開析するような河川が少ないため、山地斜面がそのまま海岸に達している。
なお、駿河湾は日本で最も深い湾として知られ、湾口(御前崎―石廊崎間)で水深2,500mに及ぶ。したがって、駿河湾を含めると、静岡県内の標高変化は7,000mにも達するダイナミックなものと言える。
*1.ラテン語で「大きな溝」の意。日本列島の形成過程で列島を南北に分断するように生じた溝。現在の状態は、古生代・中生代の古い地層に形成された溝が、新生代の新しい堆積層に埋積されている構造であり、地層構成は極めて複雑。(詳細は下記リンク先を参照下さい。)
*2.沿岸流や波浪によって運ばれた砂礫が海岸や湖岸から細長く突堤状に堆積した地形。
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